薬物療法

「ホルモン療法(内分泌療法)」「分子標的治療」「化学療法(抗がん剤治療)」の3つの種類があり、乳がん細胞の性質(サブタイプ)や患者さんの状態に応じた治療法が選ばれます。

ホルモン療法(内分泌療法)1)

乳がんは、女性ホルモン(エストロゲン)の刺激を受けてがん細胞が増殖する「ホルモン受容体陽性乳がん」が70~80%を占めています。こうしたタイプ(ホルモン感受性)の乳がんに対しては、エストロゲンの分泌や働きを妨げるホルモン療法薬が使われます。閉経前の女性と閉経後の女性では、使われる薬剤が異なることがあります。

閉経前と閉経後の主なホルモン療法薬
閉経前と閉経後の主なホルモン療法薬

日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2016年版. 金原出版, p169-173, 2016.より改変

  1. 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2016年版. 金原出版, p169-173, 2016.

分子標的治療2)

分子標的治療は、がん細胞の増殖にかかわる特定の分子(タンパク)を狙い撃ちにする薬を使って、がん細胞の増殖を抑える治療法です。乳がんの分子標的治療薬には、「抗HER2(ハーツー)薬」「血管新生阻害薬」「mTOR(エムトール)阻害薬」「CDK(シーディーケー)4/6阻害薬」「PARP(パープ)阻害薬」などの種類があり、乳がんのタイプや治療歴などに応じた治療薬が選択されます。

乳がんの主な分子標的治療薬
乳がんの主な分子標的治療薬

日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2016年版. 金原出版, p165-168, 2016、
日本臨床腫瘍学会 編. 新臨床腫瘍学(改訂第5版). 南江堂, p331-333, 2018.より作成

  1. 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2016年版. 金原出版, p165-168, 2016.
  2. 日本臨床腫瘍学会 編. 新臨床腫瘍学(改訂第5版). 南江堂, p331-333, 2018.

化学療法(抗がん剤による治療)4-6)

化学療法は、抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃する治療法です。
手術の前後に行う化学療法では、薬剤ごとに決められた投与量、投与間隔をできるだけ守り治療を受けることが大切です。
化学療法は手術の前に行っても後で行っても、再発率や生存率は同じであるといわれていますが、手術を受ける前に化学療法を行うことが増えています。これを術前化学療法といいます。
術前化学療法の主なメリットは、手術前にしこりが小さくなれば、乳房温存手術や手術での切除範囲が少なくなるなどの可能性があることです。また、しこりの変化から、術前化学療法で使用した薬の効果を確認できることなどがあります。

  1. 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2016年版. 金原出版, p74-75, 2016.
  2. 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2016年版. 金原出版, p152-153, 2016.
  3. 阿部恭子ほか 編. 乳がん患者ケアパーフェクトブック. 学研メディカル秀潤社, p86, 2017.

薬物療法中の副作用の対応について7, 8)

抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常細胞にも作用を及ぼすため、様々な副作用がでやすいことが知られています。また、分子標的治療薬やホルモン療法薬も、それぞれ特徴的な副作用が起こることがあります。
副作用の現れ方には個人差がありますので、つらい場合は我慢せず、主治医や看護師、薬剤師に相談してください。また、治療効果を十分得るには、治療を適切に続けることも大切です。治療中の注意点や副作用の対策について、医師や看護師、薬剤師に事前に確認しておくとよいでしょう。

  1. 国立がん研究センターがん対策情報センター 編. 患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版. 学研メディカル秀潤社, p139-149, 2017.
  2. 木下貴之ほか 監. 国立がん研究センターの乳がんの本. 小学館, p71, 2018.