治療

手術1)

卵巣がんの手術は、両側の卵巣と卵管の摘出+子宮の摘出+大網の切除が基本となります(下図で赤く囲った部分)。大網とは胃と腸の一部をつないで垂れ下がり、臓器をおおっている脂肪組織です。卵巣がんの転移が最も起こりやすい部位なので、卵巣の摘出と同時に切除します。

リンパ節も転移しやすい部位ですが、がんが転移しているかどうかは摘出して検査をしないとわかりません。そのため、卵巣周囲のリンパ節(後腹膜リンパ節:傍(ぼう)大動脈リンパ節+骨盤リンパ節)(下図で紫色で囲った部分)の摘出も同時に行われます。また、必要に応じて、腹水や腹腔組織の細胞の採取を行い、がんの広がりを調べます。

卵巣がんの手術範囲
卵巣がんの手術範囲
  1. 日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第2版. 金原出版, p156-159, 2016.

薬物療法

1. 化学療法(抗がん剤による治療)2)

卵巣がんは抗がん剤がよく効くがんで、手術をした後に抗がん剤治療を行うのが基本です。2種類の抗がん剤(プラチナ製剤とタキサン系製剤)を組み合わせたTC療法が標準療法とされ、広く用いられています。何らかの理由によりTC療法が行えない場合には、他の薬剤による治療を検討します。

  1. 日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第2版. 金原出版, p168-175, 2016.

2. 分子標的薬3, 4)

分子標的薬は、がん細胞に特徴的な分子(タンパク質など)を標的にして作用します。
従来の抗がん剤と異なり正常細胞に対する影響は比較的少なく、高い効果が期待されています。一方で、標的となる因子が正常細胞にも存在する場合があるため、副作用がないわけではありません3)
現在、卵巣がんに使用される分子標的薬は血管新生阻害薬とPARP(パープ)阻害薬の2種類です。

抗がん剤と分子標的薬の作用(イメージ)
抗がん剤と分子標的薬の作用(イメージ)

2-1. 血管新生阻害薬

がん細胞の増殖に必要な酸素と栄養を供給するため、がん組織では新しく血管を作る「血管新生」が活発に行われています。血管新生を行うために必要な物質に血管内皮増殖因子(VEGF)があり、血管新生阻害薬はVEGFを標的として阻害することで、がんの増殖を抑えます。

2-2. PARP(パープ)阻害薬

PARP(パープ)阻害薬は、細胞の修復に重要な役割を持つPARP(パープ)と呼ばれるタンパク質の働きを阻害し、がん細胞を死滅させます4)。卵巣がんの再発時にプラチナ製剤を含む化学療法で効果が得られた患者さんに対して使われます。

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「用語集 分子標的治療」(2018年10月時点)
  2. 阪埜浩司. 家族性腫瘍 2016; 16: 23-27.

3. 免疫療法

免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法は、T細胞にブレーキをかける過程でチェックポイントとなるPD-1経路にピンポイントで働きかけて、T細胞のブレーキを解除し、免疫を再び活発にする治療法です。 免疫チェックポイント阻害薬そのものは、直接がん細胞を攻撃することはありませんが、免疫を高めることでがん細胞を間接的に減らします。

再発・転移したとき5-7)

再発した場合の治療方針は、前回の抗がん剤治療が終わってから再発までの期間によって決定されます。
再発までの期間が6ヵ月以上ある場合は、前回の化学療法と同様にプラチナ製剤を中心とした化学療法や、手術によって再発したがん細胞をできるだけ取り除く「腫瘍減量術」、再発部位への放射線療法などが行われます。
再発までの期間が6ヵ月未満の場合は、前回とは異なる抗がん剤を使った化学療法となり、これまでの治療経過や患者さんの全身状態から薬剤が決められます。放射線療法や緩和ケアが行われることもあります。
再発は卵巣があった場所の近くだけでなく、別の場所(肝臓、大網、大腸など)に転移がみられることがあります。

再発した場合の治療法5)
再発した場合の治療法
卵巣がんの転移が起こりやすい部位6, 7)
卵巣がんの転移が起こりやすい部位
  1. 日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第2版. 金原出版, p192-198, 2016.
  2. 日本婦人科腫瘍学会 編. 卵巣がん治療ガイドライン 2015年版. 金原出版, p133-143, 2016.
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「再発、転移とは」(2018年10月時点)