乳がん
治療について
薬物療法
薬物療法には、「再発の危険性を下げる(術前薬物療法・術後薬物療法)」、「手術前にがんを小さくする(術前薬物療法)」、「手術が困難な進行がんや再発に対して延命や症状を緩和する」などの目的があり、病期(ステージ)、リスクなどに応じて行われます1)。
乳がんに対する薬物療法で用いられる薬には、「ホルモン療法(内分泌療法)」「分子標的治療」「化学療法(抗がん剤治療)」「免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)」の4つの種類があり、乳がん細胞の性質(サブタイプ)や患者さんの状態に応じた治療法が選ばれます。

•ホルモン療法(内分泌療法)2)
乳がんは、女性ホルモン(エストロゲン)の刺激を受けてがん細胞が増殖する「ホルモン受容体陽性乳がん」が70~80%を占めています。こうしたタイプ(ホルモン感受性)の乳がんに対しては、エストロゲンの分泌や働きを妨げるホルモン療法薬が使われます。閉経前の女性と閉経後の女性では、使われる薬剤が異なることがあります。
閉経前と閉経後の主なホルモン療法薬

日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版. 金原出版, p185, 2019.
- 国立がん研究センター がん情報サービス「乳癌 治療」(2022年8月現在)
- 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版. 金原出版, p180-186, 2019.
•分子標的治療3,4)
分子標的治療は、がん細胞の増殖にかかわる特定の分子(タンパク)を狙い撃ちにする薬を使って、がん細胞の増殖を抑える治療法です。乳がんの分子標的治療薬には、「抗HER2(ハーツー)薬」「血管新生阻害薬」「mTOR(エムトール)阻害薬」「CDK(シーディーケー)4/6阻害薬」「PARP(パープ)阻害薬」「抗HER2(ハーツー)抗体薬物複合体」などの種類があり、乳がんのタイプや治療歴などに応じた治療薬が選択されます。
乳がんの主な分子標的治療薬

日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版. 金原出版, p175-179, 2019.
日本臨床腫瘍学会 編. 新臨床腫瘍学(改訂第5版). 南江堂, p331-333, 2018.より作成
- 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版. 金原出版, p175-179, 2019.
- 日本臨床腫瘍学会 編. 新臨床腫瘍学(改訂第5版). 南江堂, p305-306,331-333, 2018.
•化学療法(抗がん剤による治療)5-7)
化学療法は、抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃する治療法です。
手術の前後に行う化学療法では、薬剤ごとに決められた投与量、投与間隔をできるだけ守り治療を受けることが大切です。
化学療法は手術の前に行っても後で行っても、再発率や生存率は同じであるといわれていますが、手術を受ける前に化学療法を行うことが増えています。これを術前化学療法といいます。
術前化学療法の主なメリットは、手術前にしこりが小さくなれば、乳房温存手術や手術での切除範囲が少なくなるなどの可能性があることです。また、しこりの変化から、術前化学療法で使用した薬の効果を確認できることなどがあります。

- 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版. 金原出版, p84-86, 2019.
- 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版. 金原出版, p160-164, 2019.
- 阿部恭子ほか 編. 乳がん患者ケアパーフェクトブック. 学研メディカル秀潤社, p86, 2017.
•免疫療法8,9)
免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法は、がんを攻撃する免疫反応にブレーキをかけてしまうPD-1、あるいはPD-L1と結合してそのブレーキを外し、弱まっていた免疫細胞の働きを強めてがん細胞の増殖を抑える治療法です。化学療法と一緒に、または単独で使用して治療を行います。手術の前や後に使用したり、手術ができない進行がんに使用するなど、行われる治療は病期によって異なります。
- 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版. 金原出版, p178-179, 2019.
- 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法・もっと詳しく知りたい方へ」 (2020年11月時点)
•薬物療法中の副作用の対応について10-12)
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常細胞にも作用を及ぼすため、様々な副作用がでやすいことが知られています。また、分子標的治療薬やホルモン療法薬、がん免疫療法も、それぞれ特徴的な副作用が起こることがあります。
副作用の現れ方には個人差がありますので、つらい場合は我慢せず、主治医や看護師、薬剤師に相談してください。また、治療効果を十分得るには、治療を適切に続けることも大切です。治療中の注意点や副作用の対策について、医師や看護師、薬剤師に事前に確認しておくとよいでしょう。
- 国立がん研究センターがん対策情報センター 編. 患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版. 学研メディカル秀潤社, p139-149, 2017.
- 木下貴之ほか 監. 国立がん研究センターの乳がんの本. 小学館, p71, 2018.
- 日本臨床腫瘍学会 編. がん免疫療法ガイドライン 第2版. 金原出版, p22−24, 2019.

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