治療後の生活
膀胱がんの予後1)
がんの広がりの程度やリンパ節への転移があるかどうかが予後に大きく影響します。
がんが筋層に入り込んでおらず、リンパ節への転移もない「筋層非浸潤性膀胱がん」であれば、病期がⅠ期の人の5年生存率は82.0%といわれています。
一方、「筋層浸潤性膀胱がん(筋層にまでがんが入り込んでいる)」や、リンパ節に転移している場合は、予後が悪い傾向があり、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期のそれぞれの5年生存率は53.9%、40.2%、18.3%といわれています。
予後とは・・・
病気や治療などの医学的な経過についての見通しのことです。
「予後がよい」とは、「これから病気がよくなる可能性が高い」、
「予後が悪い」とは、「これから病気が悪くなる可能性が高い」ということです。
5年生存率(ネット・サバイバル)とは・・・
治療開始から5年後生存している人の割合のことで、病期や治療法によって異なります。
純粋に「がんのみが死因となる状況」を仮定して計算します。
1)国立がん研究センター. がん対策研究所 がん登録センター, 院内がん登録 2014-2015年 5年生存率集計 報告書, 2023
経過観察と検査2)
膀胱がんは、膀胱をとり出さずに残した場合(膀胱温存)でも、膀胱をすべてとり出す手術(膀胱全摘除術)をした場合でも術後2年以内に再発することが多く、術後3年間は注意深く観察する必要があります。
膀胱温存した場合は、定期的に膀胱鏡検査と尿検査(細胞診)を行い、早期に再発をみつけることが大切です。
膀胱全摘除術を行った場合も、ほかの臓器やリンパ節へ転移していないかどうかを、CTなどを用いた画像診断で確認します。
2)吉田修 監. インフォームドコンセントのための図説シリーズ 膀胱がん. 医薬ジャーナル社, p98-103, 2010.
膀胱がんの再発や転移にともなう症状3)
膀胱がんが再発したり、転移した場合、下記の症状がみられることがあります。
いずれの場合も、症状が続くようなら医師に相談しましょう。
膀胱がんの治療後にみられる症状
膀胱がんの再発にともなう症状
- 尿に血が混じる(血尿)
- 排尿時の痛み(排尿痛)
- おしっこが近い、回数が多い(頻尿)
- 排尿後にまだ尿が残っている感じ(残尿感)
- がまんできない尿意を突然感じる(尿意切迫感)
- 下腹部の違和感、痛み
など
がんの転移にともなう症状
- せき
- 痰(たん)に血が混じる
- 骨が痛む
- お腹が痛む
- 食欲がなくなる
- 体重が減少する
など
3)吉田修 監. インフォームドコンセントのための図説シリーズ 膀胱がん. 医薬ジャーナル社, p98-103, 2010.から作成
ストーマ設置後の生活について4)
膀胱がんの状態によっては、膀胱全摘除術(膀胱を全て取り除く)後、尿路変向術(尿の通る道を新たに作る手術)を行い、ストーマ(腹部に尿を排出する出口)を作ります。
オストメイトとは
さまざまな病気や障害などが原因で、お腹に作られた尿や便の排泄口のことを総称して「ストーマ」といい、「ストーマ」を持っている人のことを「オストメイト」と呼びます。
オストメイトの生活
<排尿>
ストーマからは断続的に尿が出てくるため、尿をためるパウチをストーマの部位に貼りつけて生活します。
2~3時間に1回程度、パウチの中の尿を排出します。「代用膀胱(腸から人工的に作った新膀胱)」の場合は、パウチは使用しませんが、同様に3~4時間に1回程度、トイレでの尿の排出が必要になります。
<食事>
基本的には食生活を変える必要はないといわれています。
尿がよく出るよう十分に水分を取ります。
<入浴>
ストーマの装具をつけたままでもはずしても、自由に入浴することができます。ストーマから尿がでることがあるので、食前か食後しばらく経った排泄の少ない時間帯を選びます。
オストメイト用設備/オストメイト
公共交通機関、高速道路のサービスエリア、デパートやショッピングセンターなどでも、オストメイト対応トイレの設置が進んでいます。
図 オストメイトマーク(案内用図記号)
オストメイト対応トイレには、汚物流し、ストーマ周囲のお腹を洗う時に便利な温水シャワー、手荷物用フックや棚などの設備が整っています。
図 「オストメイト対応トイレ」の一例
4)日本オストミー協会. ストーマとの生活(2024年5月参照)
監修:小林 恭 先生
京都大学医学研究科 泌尿器科学教室 教授
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