子宮体がんとは
子宮の構造と子宮体がん
子宮体がんとは1)
子宮は、入口部分の「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」とその奥の「子宮体部(しきゅうたいぶ)」に分けられます。このうち、子宮体部にできるがんが「子宮体(しきゅうたい)がん」です。子宮内膜の細胞で発生することから、「子宮内膜(しきゅうないまく)がん」の別名もあります。子宮頸部にできる子宮頸がんとは、原因、診断法、治療法、予後などがまったく異なるので注意しましょう。閉経前後の40代後半から60代にかけて発症することが多いといわれています。
1.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第3版. 金原出版, p78-81, 2023.
子宮体がんの発生原因2)
子宮体がんはその発生原因により2つのグループに分けられます。1つは女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞(らんぽう)ホルモン)が関与するタイプです。エストロゲンには子宮内膜を厚くする働きがあります。通常は月経周期に合わせて分泌量が変わりますが、なんらかの原因でエストロゲンが長期的、継続的にたくさん分泌されると、子宮内膜はどんどん厚くなってしまいます。エストロゲンが関与するタイプは、この厚くなった内膜の異常から生じると考えられ、閉経前後の年齢層に多くみられます。もう1つはエストロゲンが関与しないタイプです。エストロゲンが関与するタイプと違って閉経後に多くみられ、転移が多いなどの特徴があります。子宮体がんの多くはエストロゲンが関与するタイプです。
子宮体がんのタイプ別特徴
子宮体がんの主なリスク因子
2.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第3版. 金原出版, p78-81, 2023.
子宮体がんの特徴
子宮体がんの患者数
子宮体がんの患者さんの数は年々増加傾向にあり、2020年の患者さんの数は17,779人でした3)。2020年に新たに子宮体がんと診断された患者さんの年齢層別の割合をみると、50歳代から60歳代に多いことがわかります3)。また、最近ではすべての年齢層で増加傾向であり、とくに40歳代の若い世代の増加が目立っています4)。
子宮体がん罹患数と死亡数の年次推移(全国推計値,女性,全年齢)
国立がん研究センター がん情報サービス「がん登録・統計」グラフデータベース(2024年9月11日時点)
子宮体がんの年齢階級別罹患率(全国推計値, 女性, 2020年)
国立がん研究センター がん情報サービス「がん登録・統計」グラフデータベース(2024年9月11日時点)
3.国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(2024年9月11日時点)
4.小田瑞恵 他. 子宮がん 頸がんと体がんの診断・治療・生活. 主婦の友社, p54, 2018.
子宮体がんの症状
子宮体がんで多くみられる症状として、月経時以外に出血する不正出血があり、約90%の患者さんにみられます5)。出血の程度は、点状のわずかな出血、一時的な少量の出血などさまざまです。また、出血が少量の場合には褐色のおりものになることも多いとされています5)。
子宮体がんが進行すると、下腹部の痛み、性交時の痛み、下肢の痛みやむくみ、排尿痛などの症状がみられる場合もあります6)。
5.小田瑞恵 他. 子宮がん 頸がんと体がんの診断・治療・生活、主婦の友社. p62, 63, 2018.
6.国立がん研究センター がん情報サービス編集委員会編. 子宮体がん(子宮内膜がん)第5版. p5, 2024.
監修:田畑 務 先生
東京女子医科大学 産婦人科 教授・講座主任
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