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治療

進行期(ステージ)別の治療


子宮頸がんの治療方針は進行期や年齢、合併症の有無など、それぞれの状況に応じて患者さんに適した治療を選択します1, 2)。治療にはおもに手術、放射線治療、薬物療法(抗がん剤による化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法)があります。

FIGO分類臨床進行期ごとの治療方法2)

FIGO分類臨床進行期ごとの治療方法

再発期 原則として全身疾患ととらえて全身化学療法による治療を行う。孤立性の遠隔転移や照射野外の再発などには手術療法や放射線治療など局所療法の適応を検討する場合もあるが、経験的な治療であり明らかなエビデンスはない。

1.がん情報サービス がん情報編集委員会 編. がんの冊子 各種がんシリーズ 子宮頸がん 第5版. 国立研究開発法人国立がん研究センター, p9, 2023.
2.国立がん研究センター内科レジデント 編. がん診療レジデントマニュアル第9版. 医学書院, p213-215, 2022.より作成

子宮頸がんの手術3,4)


子宮頸部円錐切除術(しきゅうけいぶえんすいせつじょじゅつ)4)

子宮頸がんの診断を行うための方法ですが、初期のがんの場合は治療法にもなります。子宮頸部を1cmから2cmの奥行きで切除します。子宮の多くの部分を残すことができるため、将来、妊娠することも可能です。

子宮頸部円錐切除術(しきゅうけいぶえんすいせつじょじゅつ)

子宮頸部円錐切除術(しきゅうけいぶえんすいせつじょじゅつ)

子宮全摘出術(しきゅうぜんてきしゅつじゅつ)4)

子宮全摘出術には、おもに3つの方法があります。
もっとも切除の範囲が狭い単純子宮全摘出術は、子宮を取り除く手術です。ⅠA1期に行うことが推奨されます。妊娠はできなくなってしまいますが、腟腔の深さは保たれるので性交渉への影響はありません。また多くの場合、卵巣も残すことができ、女性ホルモンの分泌も保たれます。

単純子宮全摘出術より少し広めに切除する手術を、準広汎(じゅんこうはん)子宮全摘出術といいます。リンパ管、血管に浸潤している場合のⅠA1期や、ⅠA2期に行われます。

広汎子宮全摘出術は、IB期以降の標準治療として行います。子宮全体、基靭帯(きじんたい)という子宮を支えている靭帯、腟の上部2~3cmを摘出します。若い人の場合、組織型や大きさによっては卵巣を温存することも可能です。

3.がん情報サービス がん情報編集委員会 編. がんの冊子 各種がんシリーズ 子宮頸がん 第5版. 国立研究開発法人国立がん研究センター, p16-20, 2023.
4.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版. 金原出版, p32-47, 54-57, 2023.

骨盤リンパ節郭清(かくせい:切除すること)5,6)

子宮頸がんでもっとも転移しやすいところは骨盤の中にあるリンパ節です。がん細胞はリンパ節を通って全身に広がっていく性質があり、リンパ節にがん細胞が浸潤してしまうと、さらに転移したり、再発が起こったりすることがあります。そこで準広汎子宮全摘出術、広汎子宮全摘出術などとあわせ、がんの周辺にあるリンパ節を切除する骨盤リンパ節郭清を行います。

子宮がん治療に関係するリンパ節と名称

手術後の合併症5,6)

広汎子宮全摘出術は広範囲に切除するため、体に負担がかかります。手術後に起こる術後合併症としては、閉経前に両側の卵巣を切除した場合、女性ホルモンの分泌がなくなるために、いわゆる更年期障害症状のような不快な症状を認めたり腟からの分泌物が減少したりすることがあります。また腟を切除することによる性交障害が起こることもあります。とくに骨盤リンパ節郭清を行うと、リンパ液の流れが滞り、足がむくんだり、骨盤の中にリンパ嚢胞といって液体のたまった空洞ができたりすることがあります。術後感染症が起きることもあります。さらに、排尿に関係する神経を切除した場合は、排尿障害、尿失禁が生じやすくなります。また、排便に関する障害により便秘になることがあります。ただし、最近は骨盤リンパ節郭清の範囲を慎重に決めたり、排尿に関係する神経を温存したりして、術後合併症の予防策がとられています。

5.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第3版. 金原出版, p38-40, 94-95, 2023.
6.がん情報サービス がん情報編集委員会 編. がんの冊子 各種がんシリーズ 子宮頸がん 第5版. 国立研究開発法人国立がん研究センター, p19-20, 2023.

再発リスク


術後の再発リスク因子7)

手術で採取したがん組織をあらためて検査し、再発リスクを調べます。この「再発リスク評価」をもとに、術後の治療方針を決めます。

術後の再発リスク因子

術後の再発リスク因子

術後補助療法7)

手術で採取したがん組織を調べ、再発の可能性があるとわかれば、再発を防ぐ目的で術後補助療法を行います。具体的には患者さんの状態によって、放射線治療や同時化学放射線療法などを行います。

①骨盤リンパ節転移が認められない場合

骨盤リンパ節転移以外の再発リスク因子が1つでもある場合には、一般に放射線療法が行われます。

②骨盤リンパ節転移が認められる場合

放射線治療と抗がん剤による化学療法を併用する同時化学放射線療法を行います。ただし、年齢や患者さんの状態によっては、放射線治療のみを選択する場合もあります。

7.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第3版. 金原出版, p42-45, 58-59, 2023.

放射線治療


放射線治療8-10)

高エネルギーのX線やガンマ線をあてることでがん細胞を傷つけ、がんを小さくする効果が期待できます8)。がんの根治目的(根治的放射線治療:こんちてきほうしゃせんちりょう)や、手術後に再発や転移の危険性を減らす目的(術後補助療法)として行います。体の外から照射する「外部照射」と、腟を通して子宮頸部のがんのある部分に照射する「腔内照射(くうないしょうしゃ)」の2つの方法があり、組み合わせて行うこともあります9)

外部照射10)

外部照射

腔内照射10)

腔内照射

8.がん情報サービス がん情報編集委員会 編. がんの冊子 各種がんシリーズ 子宮頸がん 第5版. 国立研究開発法人国立がん研究センター, p21, 2023.
9.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版. 金原出版, p44-45, 2023.
10.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版. 金原出版, p49, 2023.より作図

妊娠の可能性を保持するための治療法11)


最近は、将来の妊娠を希望する患者さんのため、子宮体部と子宮頸部の一部を温存できる手術を行う施設が増えてきました。広汎子宮頸部摘出術といって、がんのある子宮頸部をまわりの組織ごと大きく切除し、残った子宮体部と腟をつなぎあわせる手術です。その際、将来の妊娠に備えて子宮頸部の縫縮(子宮頸部を特殊な太い糸で輪状に縛ること)を同時に行って子宮頸部を補強する施設もあります。
開腹手術のほか、腟側からがんを切除する手術、お腹に開けた小さな穴に腹腔鏡(ふくくうきょう)という超小型カメラを差し込んで摘出する手術があります。この手術は、がんが子宮頸部にとどまっていることに加え、病巣の大きさにより制限があるなど、対象となる患者さんは限られています。

広汎子宮頸部摘出術

11.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第3版. 金原出版, p54-57, 2023.

薬物療法


化学療法(抗がん剤)12,13)

抗がん剤を用いて、がん細胞を縮小させる治療法です。おもに、遠隔転移(肺などの遠く離れた臓器やリンパ節などへの転移)のある患者さんや、再発した患者さんの場合に行います。子宮頸がんに対しては、プラチナ製剤のみの治療と他の薬を併用する治療が行われています。

分子標的薬14,15)

がん細胞に特徴的な分子を標的として攻撃し、増殖を抑えます。分子標的薬のひとつである血管新生阻害薬は、がん細胞に栄養や酸素を運ぶ新しい血管が作られるのを防ぎ、がん細胞の成長や増殖を抑えます。

免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)16)

免疫療法は、免疫による細菌やがん細胞などの異物を攻撃する働きを利用した治療法です。免疫には、異物への攻撃を過剰にして体にダメージを与えないように、ブレーキをかけるしくみも備わっています。がん細胞にはこのしくみを利用して、免疫による攻撃から逃れるタイプのものがあります。免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫の働きにブレーキをかけることを防いで、免疫に本来の働きを取り戻させる薬です。
免疫チェックポイント阻害薬そのものは、直接がん細胞を攻撃することはありませんが、免疫を高めることでがん細胞を間接的に減らします。
最近では、化学療法と免疫療法、分子標的薬など、異なる作用の薬を組み合わせる併用療法が行われることもあります。

12.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版. 金原出版, p51-52, 2023.
13.がん情報サービス がん情報編集委員会 編. がんの冊子 各種がんシリーズ 子宮頸がん 第5版. 国立研究開発法人国立がん研究センター, p22, 2023.
14.国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス 診断と治療 薬物療法(2023年4月24日時点)
15.岡本愛光 監. 婦人科腫瘍治療アップデート 第1版, 中外医学社, p151-152, 2020.
16.国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス 診断と治療 免疫療法(2023年4月24日時点)

同時化学放射線療法


同時化学放射線療法17)

手術でがんを摘出することが難しい場合などは、放射線治療で根治をめざす(根治的放射線治療)とともに、化学療法(抗がん剤治療)も行います。これを「同時化学放射線療法」と呼びます。抗がん剤は放射線治療の効果を高め、骨盤内での再発を防ぐとともに、全身に広がる目に見えないがん細胞にダメージを与えます。

17.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん 子宮体がん 卵巣がん 治療ガイドライン第3版. 金原出版, p44-45, 48-49, 2023.

子宮頸がんの根治的治療後の経過観察


経過観察の期間と間隔18)

一通り治療が終われば、通院して経過観察します。再発や転移、術後の合併症、後遺症を早期発見するためです。通院期間は5年間以上。頻度のめやすは、1~2年目は3~6ヵ月ごとです。その後は徐々に通院ペースを落としていきます。定期的に診察を受けることで再発を早期発見することができます。定期的に通院して経過観察することは重要です。

定期的な検査の目安

●1〜2年目 ⇒ 3~6ヵ月ごとに1回
●3〜5年目 ⇒ 6~12ヵ月ごとに1回
●6年目以降 ⇒ 1年ごとに1回または進行期などに応じて経過観察終了

日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版. 金原出版, p68-69,2023.

経過観察中に行う検査項目18)

経過観察中に行う検査には、触診や内診、直腸診、細胞診、胸部X線検査、腫瘍マーカー、CT、MRIなどがあります。再発の危険度の程度など、患者さんの状態に合わせて項目を決めます。
子宮頸がんの再発の大半は骨盤内に生じることから、腟内あるいは直腸から骨盤内の状態を調べる内診・直腸診は、最も有用な再発検出方法とされています。CTやMRIといった画像検査は、本来は再発が強く疑われたときの精密検査として実施されるものですが、一部の病院では再発の早期発見を目指した定期検査の一環として実施されることもあります。
腫瘍マーカーの測定は、術後の病理組織検査での組織型などをもとに、患者さんごとに考慮することが必要とされています。腫瘍マーカーとは、腫瘍細胞によってつくられる特定の物質のことです。子宮頸がんの検査ではSCCやCA125、CEAなどの物質が腫瘍マーカーとして用いられています。

18.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版. 金原出版, p68-69, 2023.

転移と再発


転移19,20)

がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで増殖することを転移といいます。治療を開始した時点ですでに別の臓器に転移しており、時間がたってから見つかるケースもあります。子宮頸がんで多くみられるのは肺、脳、傍大動脈リンパ節(骨盤より上の大動脈まわりのリンパ節)、鎖骨上窩リンパ節、骨への転移です。

再発19,20)

治療により目に見える大きさのがんがなくなった後、再びがんが出現することを再発といいます。骨盤内に起こる再発は「局所再発」、肺や肝臓など子宮頸部から離れた臓器での再発は「遠隔転移再発」と呼びます。それぞれ治療法も異なります。

子宮頸がんの骨盤内再発が起こりやすい場所21,22)

子宮頸がんの骨盤内再発が起こりやすい場所

(イメージ図)

再発の治療19,20,23)

①骨盤の中に再発したときの治療

骨盤の中で再発が起きた場合は、過去に放射線治療を行っていない場合は、放射線治療あるいは同時化学放射線療法が行われます。過去に放射線治療を行っている場合は、緩和ケアや症状の緩和を目的とした化学療法を行います。その他、子宮、腟とともに下部結腸、直腸、膀胱を切除する骨盤除臓術(骨盤内臓器全摘出術)や子宮全摘出術などの手術療法あるいは放射線治療が行われることもあります。

②骨盤の外に再発したときの治療

遠隔転移が見つかれば、基本的には化学療法によって治療します。多臓器に及ぶ再発、多発性の転移には化学療法を行います。ただし、病巣が1ヵ所にとどまっていれば手術や放射線治療を選ぶこともあります。

19.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版. 金原出版, p73-74, 2023.
20.国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス/症状を知る/生活の工夫>転移・再発(2023年5月16日時点)
21.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版. 金原出版, p73-74, 2023.より作図
22.Fulcher AS et al. Radiographics 1999; 19: S103-116より作図
23.がん情報サービス がん情報編集委員会 編. がんの冊子 各種がんシリーズ 子宮頸がん 第5版. 国立研究開発法人国立がん研究センター, p24, 2023.

緩和ケア24)

がんの治療中は痛みや吐き気、食欲低下、息苦しさ、だるさといった体の不調、さらに気分の落ち込みなど心の問題にも直面します。そばにいる家族もまた心配や悲しみ、生活不安などを抱える場合があります。緩和ケアでは、患者さんとその家族が自分らしく生活できるよう、医療的な面からだけでなく心理社会的な面からも支え、QOL(生活の質)を改善します。さらに、スピリチュアルな苦痛(生の意味やよりどころを喪失する苦しみなど)についてもケアするアプローチを行います。がんが進行してからだけでなく、早い時期から緩和ケアを利用することで、治療における身体的・精神的なつらさを和らげ、QOLを改善していきましょう。詳しくは主治医や看護師、病院の地域医療連携室などに相談するとよいでしょう。

24.日本婦人科腫瘍学会 編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版. 金原出版, p70-75, 226-228, 2023.

監修:加藤 聖子 先生
九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学(婦人科学産科学)教授


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