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治療

治療の考え方 


胆道がんを完全に治すためには、手術が最も有効と考えられています。そのため、まず手術ができるかどうかを検討します。
一般的には、病期がⅠ~Ⅱ期は切除可能で、Ⅲ~Ⅳ期はがんの進行具合を十分にチェックして判断します。身体が手術に耐えられる状態かどうかも大きくかかわります。
手術ができない場合には、薬物療法を中心とした治療を行います。

胆道がんの治療の流れのイメージ

※効果は現時点では十分に証明されておらず、標準治療ではありません。

術後補助療法とは

手術でがんを完全に切除できたように見えても、同じ場所から再発してしまうことがあります。そのため、手術後に薬物療法や放射線療法、化学放射線療法(薬物療法と放射線療法の併用)を行うことがあり、これを術後補助療法といいます。

参考:国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科、肝胆膵外科、他 編著:最先端治療 胆道がん・膵臓がん, p,40-41, 法研, 2019
がん情報サービス がん情報編集委員会編. がんの冊子 各種がんシリーズ106 胆道がん, p.15, 2021

主な治療法


  • 手術
    手術で切除する範囲は、がんが発生した部位や、がんの広がり方によって決まります(手術法参照)。
    薬物療法の効果がみられた後に手術を行うこともあります。

手術のイラスト

  • 薬物療法
    手術ができない場合には、がんの進行を抑える薬物療法が治療の中心になります。胆道がんには、免疫チェックポイント阻害薬、化学療法(抗がん剤)、分子標的治療薬があります。

薬物療法のイラスト

  • 放射線療法・化学放射線療法
    がんの進行を遅らせたり、胆道ステント(胆道ドレナージ参照)がふさがってしまうのを防いだり、痛みを和らげたりすることなどを目的として放射線療法を行う場合があります。化学放射線療法は、薬物療法と放射線療法を併用します。
  • ※現時点では、胆道がんに対する放射線療法の効果は十分に証明されていません。

放射線療法のイラスト

  • 緩和ケア
    がんに伴う心と体、社会的なつらさを和らげるものです。
  • 支持療法
    がんそのものによる症状や治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするための予防、治療およびケアです。

これらの治療を始める前に、胆道ドレナージを行うことがあります
胆道ドレナージへ→)

胆道ドレナージ


胆道がんによって胆汁の流れが滞ると、黄疸の症状が出たり、治療を安全に進めることが難しくなったりすることがあります。そのため、「胆道ドレナージ」と呼ばれる、たまった胆汁を通すための処置を行います。胆道ドレナージの方法にはチューブを使って胆汁を鼻やお腹から体の外に出す方法(❶外ろう)と、ステント(プラスチックや金属の管)を胆管の中に挿入して胆汁を腸に流す方法(❷内ろう)があります。方法は患者さんの状態に合わせて選ばれます。

❶チューブを使用(外ろう)

胃を通って鼻から
体の外へ胆汁を出す方法

胃を通って鼻から
体の外へ胆汁を出す場合の外見のイラスト

内視鏡を使って鼻から胆管までチューブを挿入

胃を通って鼻から
体の外へ胆汁を出す場合の体内の様子のイラスト

肝臓を通ってお腹から
体の外へ胆汁を出す方法

肝臓を通ってお腹から体の外へ胆汁を出す場合の外見のイラスト

お腹の皮膚から肝臓を通して胆管にチューブを挿入

肝臓を通ってお腹から体の外へ胆汁を出す場合の体内の様子のイラスト

❷ステントを使用(内ろう)

内視鏡を用いるなどしてステントを挿入

内視鏡を用いるなどしてステントを挿入するイラスト

胆管炎について

胆汁の流れが悪くなると、胆管の中で細菌が増殖して胆管炎を起こすおそれがあります。胆管炎が重症化すると命の危険が生じることもあるため、発熱、黄疸(胆道がんの症状参照)、右上腹部痛といった症状があらわれた場合はすぐに病院へ連絡してください。

参考:がん情報サービス がん情報編集委員会編. がんの冊子 各種がんシリーズ106 胆道がん, p16-17, 2021
Minds. Minds版やさしい解説 胆道がん, 第1版, 2010
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科、肝胆膵外科、他 編著:最先端治療 胆道がん・膵臓がん, p.52, 法研, 2019
一般社団法人 日本胆道学会ウェブサイト. 急性胆管炎(https://www.tando.gr.jp/qa/qa03/

手術法


● 肝内胆管がん

がんの発生部位が肝臓の右寄りなら右葉(図)、左寄りなら左葉を切除します。がんが左右の葉を越えて広がっている場合には、さらに大きく切除する拡大肝葉切除を行います。

例:肝右葉切除

肝内胆管がんの手術例のイラスト

● 肝門部領域胆管がん

がんを完全に取り切るために、胆管のほかに肝臓や胆のうなど周りの臓器の一部や、周辺のリンパ節も切除するのが一般的です。
切除後は、残った胆管と空腸(小腸の一部)をつなぎ合わせる再建を行います(図)。

例:拡大肝右葉切除・肝外胆管切除と胆道再建(胆管空腸吻合術)

【切除前】

肝門部領域胆管がんの手術例のイラスト(切除前)

↓


【切除後】

肝門部領域胆管がんの手術例のイラスト(切除後)

↓


【再建後】

肝門部領域胆管がんの手術例のイラスト(再建後)

● 遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がん

遠位胆管がんや十二指腸乳頭部がんは膵頭十二指腸切除(胆管、胆のう、膵頭部、十二指腸および連続する胃や腸の一部を切除)を行うのが一般的です。周辺のリンパ節も切除します。
切除後は、残った胆管、膵臓、胃を空腸(小腸の一部)とつなぎ合わせる再建を行います(図)。

例:膵頭十二指腸切除と再建

【切除前】

遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がんの手術例のイラスト(切除前)

↓

【切除後】

遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がんの手術例のイラスト(切除後)

↓

【再建後】

遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がんの手術例のイラスト(再建後)

参考:がん情報サービス がん情報編集委員会編. がんの冊子 各種がんシリーズ106 胆道がん, p18-21, 2021
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科、肝胆膵外科、他 編著:最先端治療 胆道がん・膵臓がん, p,46-54, 法研, 2019


● 胆のうがん

がんが胆のう粘膜内にとどまっている場合には、胆のうの摘出術を行います(図)。がんが粘膜を超えて広がっている場合には、その広がりに応じて、肝臓、胆管、膵臓、大腸、十二指腸、リンパ節など周りの臓器の切除が必要になります。

例:胆のう摘出術

胆のうがんの手術例のイラスト

手術後の経過について

胆道がんの手術は、ごく早期の場合を除いて切除範囲が広くなることが多く、体への負担が少なくありません。手術直後は傷の痛みもあります。食欲・食事量・消化力が低下するなど、食事に関する変化もみられます。
手術直後は、留置した管や痛みなどで体を動かしにくい状態になりますが、無理のない範囲で体を動かすことが体力の回復につながります(例:ベッドの上で姿勢を変える、廊下を歩くなど)。

手術後の合併症


重い合併症の多くは手術後1週間以内に起こるので、注意深く経過を観察します。合併症は多岐にわたりますが、主に注意が必要な合併症には次のようなものがあります。

  • 肝不全
    肝機能障害により黄疸、腹水、意識の低下などが起こります。肝臓の切除範囲が大きい場合や、肝臓の機能がもともと低下している場合は、手術の前に肝不全予防のための処置を行うことがあります。
  • 胆汁ろう、膵ろう
    手術で取り除き、つなぎ合わせた部分から胆汁や膵液が漏れ出る症状です。胆汁ろうは自然におさまることが多いのですが、腹膜炎の原因になることもあります。膵液には脂肪やタンパク質を溶かす働きがあるので、膵液が漏れると近くの血管を傷つけることがあります。
  • 胸水、腹水
    胸やお腹に体液がたまる症状です。自然に治ることもありますが、体液の量が多くて呼吸に支障が出るような場合には、体液を抜いたり、減少させる薬を用いたりします。
  • 胆管炎
    胆管と腸をつなぎ合わせる再建を行った場合、つないだ箇所が狭くなったり、腸の動きが悪くなったりして腸液が逆流し、胆管炎を起こすことがあります。胆管炎は退院後もくり返すことがあるため、上腹部の痛みや高熱、黄疸が出た場合には担当医に相談しましょう。
  • 感染性の合併症
    手術によるお腹の表面の傷や、内部の切除・縫合部分が感染により化膿することがあります。内部の膿は体外から管を入れて排出します。

参考:がん情報サービス がん情報編集委員会編. がんの冊子 各種がんシリーズ106 胆道がん, p18-21, 2021
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科、肝胆膵外科、他 編著:最先端治療 胆道がん・膵臓がん, p,46-54, 法研, 2019
日本外科感染症学会雑誌 15(1): p77-84, 2018

薬物療法


● 薬物療法

手術ができない場合やがんが再発した場合には薬物療法が治療の中心になります。診断後に初めて行う薬物療法(1次療法)では主に、「免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用」または「化学療法」が行われます。

胆道がんの薬物療法の主なパターン

薬物療法(経口投与)のイラスト

薬物療法(点滴静脈注射)のイラスト


● 免疫チェックポイント阻害薬

がん細胞は増殖するために、人に本来備わっている「免疫細胞が、がん細胞を攻撃する機能」にブレーキをかけます。免疫チェックポイント阻害薬は、この「がん細胞によるブレーキ」を解除し、本来の免疫細胞を活性化させます。
免疫チェックポイント阻害薬そのものが直接的にがん細胞を攻撃するのではなく、免疫細胞を活性化することで間接的にがん細胞を攻撃します。

免疫チェックポイント阻害薬の作用機序のイメージ


● 化学療法

抗がん剤という、がん細胞の分裂や増殖などを阻害する薬剤によって、がんを小さくしたり、進行を抑えることを目指す治療です。抗がん剤はがん細胞と正常細胞に区別なく作用します。
胆道がんの1次治療としては、効果が認められている抗がん剤の組み合わせが複数あり、それらが標準的な治療法として行われています。

抗がん剤の作用のイメージ

個別化治療

個別化治療のイラスト

誰もが一律に同じ治療をするのではなく、遺伝子異常などのがんの特徴に合わせて、一人ひとりに適した治療を行うことを「個別化治療」といいます。「個別化治療」のうち、がんの組織や血液を使って遺伝子の変化を調べ、遺伝子情報によるがんの性質や体質、病状に応じた治療を行うことを「がんゲノム医療」といいます。胆道がんでは現在のところ、薬物療法(薬物療法参照)が効かなくなったり、副作用などで治療を続けるのが難しい場合に、個別化治療を検討することがあります。

注)遺伝子の異常や治療薬が見つからない場合もあります

  • 分子標的治療薬
    がんの発生や増殖に関わる分子を狙い撃ちする治療薬です。がん遺伝子やがんのタンパク質などを標的としてその働きを阻害し、がん細胞の増殖を抑えます。胆道がんでは、標的となる遺伝子として「FGFR(エフジーエフアール)」や「NTRK(エヌティーアールケー)」があげられ、これらの遺伝子に異常が見つかった場合には、分子標的治療薬を選択することがあります。
  • 免疫チェックポイント阻害薬
    マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-High[エムエスアイ ハイ])かどうか、あるいはがん細胞がもっている遺伝子変異の量の値が高い(TMB-High [ティーエムビー ハイ] )かどうかを調べ、診断された患者さんに使われることがあります。
遺伝子変異などと治療薬の表

※がん細胞のDNAにあるマイクロサテライトと呼ばれる場所で、DNAの複製ミスが積み重なっている状態

経過観察


がんの治療を受けた患者さんにおいて、術後の回復状況、薬剤の効果と副作用、全身の状態、転移・再発の有無を定期的に確認するために経過観察を行います。
経過観察のスケジュールや検査内容は患者さんごとに異なります。
早い段階で転移・再発を発見できれば、治療選択肢が広がります。医師と相談しながら、定期的に受診することが大切です。

腹部超音波検査のイラスト

CT検査のイラスト

転移・再発


● 転移

転移とは、リンパ液や血液の流れによってがん細胞がほかの臓器に運ばれ、そこで増えた状態をいいます。胆道がんでは、周囲のリンパ節、肝臓、肺などの臓器に転移したり、膵臓などの周囲の臓器に浸潤(がんが周囲に染み出るように広がっていく)したりすることがあります。
治療は転移の状況に応じて行われますが、多くの場合は薬物療法を検討します。骨に転移した場合は、痛みを和らげる目的で放射線治療を行うこともあります。


● 再発

再発とは、治療によって目で見える大きさのがんがなくなった後に、再びがんが出現することをいいます。
がんを切除した部位やその近くに起こる局所再発のほか、腹膜にがんが散らばる腹膜播種として見つかることがあります。再発の場合も薬物療法が治療の中心となります。

イラスト

参考:がん情報サービス がん情報編集委員会編. がんの冊子 各種がんシリーズ106 胆道がん, p24, 2021

監修:

古瀬 純司 先生
地方独立行政法人 神奈川県立病院機構
神奈川県立がんセンター 総長

海野 倫明 先生
国立大学法人 東北大学大学院医学系研究科
消化器外科学 教授


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