胃がんとは
胃の構造と役割
胃の構造
胃は上腹部の左側に位置しています。食べ物を食べると食道から胃に入り、その後十二指腸に流れていきます。胃の入り口を噴門、胃の出口を幽門と呼びます。胃の入り口に近い部分を胃底部、真ん中の部分を胃体部、幽門の手前の部分を幽門部と呼びます。また、食道と胃の境目を食道胃接合部と呼びます*1。
胃の壁は、内側から順に、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜と呼ばれる5層に分けられます*2。
胃の構造*2
胃の役割
胃の役割は、食べたものを細かくくだいて胃液と混ぜて消化し、少しずつ十二指腸へ送り出すことです。そのほかにも、食べたものを一時的にためておく、食べたものと一緒に侵入した細菌などを胃酸によって殺菌するなど、さまざまな働きがあります*3。
*1. 日本胃癌学会 編. 患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版第3版, 金原出版, p2, 2023
*2. 国立がん研究センター がん情報サービス編集委員会 編. がんの冊子 各種がんシリーズ 胃がん 第5版, p3, 2022
*3. 平山廉三 他. お医者さんの話がよくわかるから安心できる「胃がん」と言われたら…, 保健同人社, p19-22, 2009
胃がんの発生
胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序に増えていくことにより発生します*4。胃のどの部位にも発生しますが、胃の出口に近い部位での発生が多いとされています*5。
また、食道と胃のつなぎ目である食道胃接合部に発生したがんは食道がんや胃がんとはいわず、食道胃接合部がんといいます。具体的には食道胃接合部の上下2cmの範囲にがんの中心があるものが食道胃接合部がんです*6。
胃がんの発生
胃がんの発生要因には、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染と喫煙があります。その他に、食塩・高塩分食品の摂取が、胃がんが発生する危険性を高めることが報告されています*4 。
*4. 国立がん研究センター がん情報サービス編集委員会 編. がんの冊子 各種がんシリーズ 胃がん 第5版, p4-5, 2022
*5. 平山廉三 他. お医者さんの話がよくわかるから安心できる「胃がん」と言われたら…, 保健同人社, p40, 2009
*6. 日本胃癌学会 編. 胃癌取扱い規約 第15版 2017年10月,金原出版, p3-5, 2017
胃がんの症状
胃がんは、早期の段階では目立った症状が少なく、病気がかなり進行しても症状があらわれない場合があります。実際、早期の胃がんでは、約半数の患者さんは何らかの症状をきっかけとして受診し診断されていますが、残り半数の患者さんは胃がん検診などで異常を指摘され診断にいたっています*7,8。
早期の胃がんにおける主な症状、胃がんの進行によりみられる主な症状には、次のようなものがあります。
早期の胃がんにおける主な症状*9
・ 症状なし(無症状)
・ みぞおち辺りの痛み
・ 腹部の張り、不快感
・ 胸やけ
・ 食べたもののつかえ感 など
進行時の胃がんにおける主な症状*9
・ 症状なし(無症状)
・ ふらつき、めまい
・ 動悸、息切れ
・ 体重減少
・ 吐血、タール便 など
*7. 片井均 他 監. 国立がん研究センターの胃がんの本, 小学館クリエイティブ, p18-19, 2018
*8. 平山廉三 他. お医者さんの話がよくわかるから安心できる「胃がん」と言われたら…, 保健同人社, p40-41, 2009
*9. 笹子三津留 編. インフォームドコンセントのための図説シリーズ 胃がん 改訂3版, 医薬ジャーナル社, p38-41, 2018
胃がんの組織型
組織型(顕微鏡でみたがんの細胞・組織の顔かたち)でみると、胃がんのほとんどは胃の粘膜上皮から発生する腺がんです *10 。
胃腺がんは増殖の仕方の違いから、分化型と未分化型に分けられます 。未分化型胃がんはより悪性度が高く、早い段階からより深くに浸潤したり、リンパ節転移※を生じたりします*10。
※ 転移(てんい)
最初にがんが発生した部位のがん細胞が、血液やリンパ液の流れにのって、他の臓器に移動して、増殖すること。
分化型胃がんと未分化型胃がん
引用*10,11より作成
*10. 日本胃癌学会 編. 患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版 第3版, 金原出版, p6-7, 11-12, 44, 2023
*11. 佐野武 監. 胃がん 完治をめざす最新治療ガイド, 講談社, p21, 2016
胃がんの患者数
2019年に新たにがんと診断された患者数データより、胃がんは、男性では約8.5万人で前立腺がん、大腸がんに次いで多く、女性では約3.9万人で乳がん、大腸がん、結腸がん、肺がんに次いで多いことがわかります。
がん罹患数の順位(2019年)*12
胃がんの患者数を年齢別にみると、男女とも50歳代から多くなり、加齢とともに増加します。男性では80歳代前半でとくに多くなります*13。
*12. 国立がん研究センター がん情報サービス. 「がん統計」 最新がん統計のまとめ
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html(2023年11月28日閲覧)
*13. 国立がん研究センター がん情報サービス. 「がん統計」 がん種別統計情報 胃
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/5_stomach.html(2023年11月28日閲覧)
監修:掛地 吉弘 先生
神戸大学大学院医学研究科 外科学講座 食道胃腸外科学分野 教授
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