手術療法後の生活
経過観察*1
完治を目標とした治療が終了したあとは、全身の状態や後遺症がないかを確認し、再発を早期発見するために、定期的に通院して検査を受けます。受診と検査の頻度は、がんの進行度や治療の内容、体力の回復や後遺症の程度などによって異なります。
手術療法のあとの経過観察では、回復の度合いや再発の有無を確認するために、定期的に通院して検査を受けます。頻度は状況により異なりますが、少なくとも手術後5年間は通院が必要です。
*1. 国立がん研究センター がん情報サービス編集委員会 編. がんの冊子 各種がんシリーズ 胃がん 第5版, p25, 2022
術後の後遺症とケア*2,3
胃を切除した後には、様々な後遺症が起きる場合があります。
特に食事のとり方や食べるものに注意して、新しい生活習慣に少しずつ慣れましょう。
ダンピング症候群
食べたものが急に小腸に入ってしまうことで起きる様々な症状の総称です。幽門を切除した手術の後に起こりやすくなります。食後30分後くらいに起きる早期ダンピング症候群では、動悸や頻脈、全身のだるさといった症状が現れます。食事の回数を増やし、1回の食事量を減らして、ゆっくりとよくかんで食べることで予防することができます。
食後2~3時間後くらいに起きる後期ダンピング症候群では、めまいや眠気、手指のふるえといった症状があらわれます。後期ダンピング症候群は、ご飯や麺類、パンなど糖質を多く含む食事を一度に食べすぎることで起こります。糖質の過剰な摂取により血糖値が急上昇すると、血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌されます。その結果、過剰なインスリンにより血糖値が下がりすぎてしまい、低血糖に陥るためにダンピング症候群の症状があらわれます。糖質を多く含む食事や甘みの強いジュース、流動食を控え、もし症状が出たら飴玉などをなめることで症状を改善できます。
逆流性食道炎
胃液や腸液、胆汁といった消化液が喉のほうへ逆流し、胸やけなどの症状が現れることがあります。横になると消化液が逆流しやすくなるので、食事は就寝の2~4時間前までに済ませるようにしましょう。胆汁の量を抑えるために、脂肪の多い食事を控えることも大切です。
貧血
胃を切除したことで鉄やビタミンB12の吸収が悪くなり、貧血が起こる場合がありますので、定期的に血液検査を受けましょう。食事だけでは鉄やビタミンB12を補いきれないので、鉄剤やビタミン剤で補充する必要がある場合もあります。
骨粗しょう症
胃を切除したことでカルシウムの吸収が悪くなり、骨が弱くなって骨折しやすくなります。
普段からカルシウムをとるように気を付けたり、適度に運動したりすることが大切です。カルシウム剤やビタミン剤を補充する必要がある場合もあります。
*2. 日本胃癌学会編. 患者さんのための胃がん治療ガイドライン2023年版 第3版, 金原出版, p68-70, 2023
*3. 国立がん研究センターがん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/follow_up.html(2023年12月13日閲覧)
手術療法後の食生活*4
胃の切除後は胃腸のリハビリ期間と考え、消化しやすい食べものを少量ずつよく噛んで食べるなど、胃腸の負担を少なくする食生活を心がけることが基本となります。また、胃を切除すると殺菌作用のある胃酸の分泌が減るため、食中毒などにも注意が必要です。
消化能力に合った食生活に慣れて体調が安定してきたら、特に食べてはいけないものはありませんが、食物繊維、脂質、タンニンを多く含む食品や炭酸飲料とアルコールについては、注意しましょう。一方、カルシウム、鉄分、たんぱく質など必要な栄養素は積極的にとることが大切です。
胃がん療養中にとりたい栄養素・食品
カルシウムを多く含むもの
食品例
- 乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜など
カルシウムの吸収を助けるビタミンDと一緒にとることが望ましい
鉄分を多く含むもの
食品例
- 肉類、魚類、卵、大豆製品、緑黄色野菜など
鉄の吸収を助けるビタミンCと一緒にとることが望ましい
たんぱく質を多く含むもの
食品例
- 卵、肉類、魚類、大豆製品、乳製品など
肉や魚は脂肪分が少ないものが適している
炭水化物を多く含むもの
食品例
- ご飯、食パン、ジャガイモなど
毎日のエネルギー源。ただし、血糖値の変化に注意し、適量をよくかんでゆっくり食べることが大切
ビタミンDを多く含むもの
食品例
- 魚類、肉類、卵、干しシイタケなど
ビタミンDは食品の成分と日光によって作られるので日光浴も必要
ビタミンCを多く含むもの
食品例
- 緑黄色野菜、果物など
ビタミンCは食事で補うことができるが、水溶性のため蓄えておくことができないので、毎日バランスよくとることが大切
*4. 瀬戸泰之 他 監. マンガと図解でわかる胃がん・大腸がん, 法研, p88-91, 2017
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