治療
胸膜中皮腫の治療法1)
患者さんの状況に応じて、
さまざまな治療法を組み合わせて治療を進めます。
胸膜中皮腫の主な治療法には、外科療法(手術)、放射線療法、薬物療法(抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬)、緩和医療があります。これらの複数の治療法を組み合わせて行うことを「集学的治療」と呼びます。


1)藤本伸一 監. 患者さんとご家族のための胸膜中皮腫ハンドブック 第3版.石綿関連疾患患者を多面的に評価し治療・ケアを提供するチームアプローチの確立, p.12, 2022
外科療法2,3)
胸膜中皮腫の治療は、「手術が可能ならば、手術が望ましい」とされています。
病変が胸膜にとどまり、リンパ節転移や遠隔転移がなく、すべての病巣を完全に取りきることが可能であると判断された場合に手術の対象となります。
胸膜中皮腫の手術術式
手術には、胸膜外肺全摘術(EPP)と胸膜切除/肺剥皮術(P/D)の2つの方法があります。

すべての病変を、片側の肺を含めて胸膜や横隔膜、心膜ごと取り除く手術です。
がんをより多く取り除くことができます。
術後の放射線療法が可能です。
ただし、負担の大きい術式ですので、適応は慎重に判断する必要があります。

外側の胸膜(壁側胸膜)を切除し、さらに、内側の胸膜(臓側胸膜)をはぎ取る手術です。
肺を温存するので、心肺機能や全身状態がやや低下している場合にも行えますが、適応は慎重に判断する必要があります。
術後の放射線療法は、肺へ悪影響を及ぼす可能性があるため推奨されません。

2)藤本伸一 監. 患者さんとご家族のための胸膜中皮腫ハンドブック 第3版.石綿関連疾患患者を多面的に評価し治療・ケアを提供するチームアプローチの確立, p.14, 2022
3)国立がん研究センター 希少がんセンター さまざまな希少がんの解説(悪性胸膜中皮腫)
(https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/mesothelioma/index.html)(2025年3月閲覧)
放射線療法4,5)
放射線療法は、骨などに遠隔転移した病変のコントロールや、胸膜の病変による痛みを和らげることを目的に行われることが多く、応急処置的・緩和的位置づけとして重要な治療手段となっています。また、術後の再発予防に用いられることもあります。

手術の後、再発予防を目的に行います。放射線は、病気があった側の首の付け根からへその位置くらいまでの上半身に照射します。
照射範囲には気管、食道、骨などの臓器が含まれており、それらの臓器が耐えられる放射線の量は限られていることから、がんに対して十分な量が照射できない場合もあります。

手術が難しい場合や再発した場合に、患部の痛みを和らげる目的で行われます。
放射線の照射範囲をできる限り狭くすることにより副作用の軽減をはかります。
腫瘍の縮小と痛みの軽減が期待でき、骨に転移している場合も転移病変に照射することで痛みの軽減が期待できます。

4)国立がん研究センター 希少がんセンター さまざまな希少がんの解説(悪性胸膜中皮腫)
(https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/mesothelioma/index.html)(2025年3月閲覧)
5)藤本伸一 監. 患者さんとご家族のための胸膜中皮腫ハンドブック 第3版.石綿関連疾患患者を多面的に評価し治療・ケアを提供するチームアプローチの確立, p.20,21, 2022
薬物療法6,7)
薬物療法は、がんを治したり、がんの進行を抑えたりする治療法です。手術ができない場合や、手術後の再発を予防するなどの目的で行われます。
現在、胸膜中皮腫の薬物療法として、抗がん剤および免疫チェックポイント阻害薬が保険適用となっています。
抗がん剤
細胞が増殖するしくみを邪魔してがん細胞を攻撃する薬剤です。
全身のがん細胞に作用しますが、がん細胞だけでなく正常な細胞にも作用します。
複数の抗がん剤を組み合わせたり、免疫チェックポイント阻害薬などと組み合わせて使用されることもあります。

免疫チェックポイント阻害薬
免疫細胞は、細菌やウイルス、がん細胞などの異物を見つけると、それを排除するためにさまざまな働きをします。がん細胞の中には、免疫細胞と結合することによって、免疫細胞にブレーキをかけ、その攻撃から逃れる仕組みをもっているものがあります。このような、がん細胞と免疫細胞の結合を❝免疫チェックポイント❞といいます。免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞と免疫細胞の免疫チェックポイントを介した結合を阻害することで、がん細胞によって抑えられていた免疫機能を再び活性化させてがん細胞を攻撃します。

6)日本肺癌学会 編. 肺癌診療ガイドライン 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2024年版. 金原出版, p.381, 2024
7)藤本伸一 監. 患者さんとご家族のための胸膜中皮腫ハンドブック 第3版.石綿関連疾患患者を多面的に評価し治療・ケアを提供するチームアプローチの確立, p.16-19, 2022
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