乳がん
遺伝性乳がんとは
検診と治療についての考え方
(遺伝性乳がんの可能性が高い場合)
乳がん全体の中では、遺伝性乳がんは少数にすぎません。しかし、遺伝性乳がんのリスクが高い場合は、より確かな遺伝性乳がんに関する情報を得ておくことが、今後の健康管理にとって役立ちます。
乳がんを発症していない場合と、すでに乳がんを発症している場合、それぞれの対策の一部をご紹介します。
•乳がんを発症していない場合の対策1)
- 遺伝性乳がんの可能性が高いと考えられる場合は、遺伝性乳がんに関する詳細な評価を行う診療の流れの中で乳がんの遺伝に関する検査(遺伝学的検査)を受けることが一つの選択肢となることを提示し、希望があれば受けていただくことがある。
※遺伝学的検査を受けるかどうかは、本人の自由意志に基づいて決定されるものであり、強制されることはない。がんを発症していない方が遺伝学的検査を受ける場合は自費診療で行われる。 - がんの予防や検診は、遺伝性であることを考慮したうえで実施する。
•すでに乳がんを発症している場合の対策1-4)
- 手術方法:乳房温存療法の強い希望がない場合は、再発リスクなどを考慮し乳房全切除術が勧められる
- 本人の意思に基づき遺伝カウンセリング体制などの環境が整備されている条件下でリスク低減手術*を受けることが勧められる
※なお、転移・再発乳がんに対しては、主治医から勧められた BRCA遺伝子検査の結果、変異がある(陽性)と判定された場合は、乳がんのタイプに応じた薬物治療が選択されることもある
*乳がんや卵巣がんのリスクを下げるために、乳がんを発症していない反対側の乳房や卵巣を切除する手術のこと
2020年4月から、HBOCと診断された患者さんについては、リスク低減手術および乳房再建術が保険診療の対象となりました。
HBOCかどうかを調べる検査については HBOC に関するQ&Aをご覧ください。
- 日本乳癌学会 編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版, 金原出版, p236-239, 2023.
- 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構 編. 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2021年版. 金原出版, p113-121, 2021
- 原野謙一. 腫瘍内科 2018; 22: 286-289.
- 日本HBOCコンソーシアム広報委員会 編. 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)をご理解いただくために(ver.5.1). p11-14, 2020.