子宮頸がん
よりよい日常生活のために
患者さんとご家族の心のケア
がん患者さんは、がんと告げられたショックに始まり、治療費や再発を心配したり、不安や喪失感に苦しんだり、仕事・家事・育児との両立に悩んだりするなど、さまざまな種類のストレスを経験して、心に大きな負担がかかります。また、患者さんのご家族も、がんに戸惑い、悩み、不安を抱き、患者さんを支えようと頑張りすぎたりすることで、患者さんと同様に心のつらさを抱えてしまうことがあります。
がん治療は長期にわたりますので、不安やストレスをうまく解消して心の負担を軽くしていく、心のケアが大切です。ここでは子宮頸がんの患者さんとご家族の心に注目して、がんと上手に付き合っていくための、工夫やヒントをご紹介します。
■ストレスへの心の反応
がんと告げられることは衝撃的で、大きなストレスとなって患者さんとご家族の心にのしかかります。はじめは、大きな衝撃から心を守ろうとする自然な反応として、「まさか自分ががんのはずがない」など認めたくない気持ちを抱いたり、「なぜ私がこんな目に」と怒りを感じたりすることがあります。また、自分を責めたり、絶望感にさいなまれたりするなど、ショックや動揺、混乱を経験するかもしれません。
その後、漠然とした不安や気持ちの落ち込みなど、心がつらい状態になりやすくなります。心配事が頭から離れない、いらいらして怒りっぽい、集中できない、眠れない、食欲が出ないといった症状により、一時的に日常生活に支障が生じることもあります。
このような時期を経て、人間が本来もっている困難を乗り越え、適応しようとする力が働きだします。通常、数日~数週間くらいのうちに、つらい状況を乗り越えようと気持ちが切り替わっていくでしょう。
国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト 心のケア がんと心(2022年7月19日時点)
■心がつらい時期を乗り越えるために
大きなストレスを受けたときの感情の揺れは、誰にでも起こりうる、自然な心の反応です。つらい時期をうまく乗り越えるために、不安や落ち込みを和らげる次のような工夫をしてみましょう。
- つらい気持ちを話してみる
悩みや心配事、つらい気持ちを、家族や親しい友人など身近な人に話してみましょう。ただ聞いてもらうだけでも、気持ちが少し楽になるでしょう。話していくうちに、自分の中で気持ちの整理ができてくることもあります。身近な人に話すことが難しいときには、「がん相談支援センター」などの相談員に聞いてもらったり、患者会やサポートグループに参加して、気持ちや体験を分かち合ったりすることもできます。不安は抱え込まずに、言葉にして話すことが大切です。 - 自分らしくリラックスできることを行う
無理に病気と向き合おうとする必要はありません。心配事をシャットアウトする時間も大切です。音楽を聴く、絵を描く、本を読む、日記を書くなど、自分らしくリラックスできることを試してみましょう。入浴、マッサージ、散歩やストレッチ、深呼吸、瞑想なども、不安や緊張を和らげるのに役に立つかもしれません。 - 心のケアの専門家の助けを借りる
不安や落ち込みが長引き、眠れない、食欲がないなど、日常生活の支障が続く場合は、心のケアの専門家による支援を受けることを考えましょう。強いストレスによって、適応障害やうつ病など、専門的な治療が必要な状態になっている可能性もあります。まずは主治医や看護師などに、心のつらさを相談してみましょう。精神腫瘍医や臨床心理士などの心のケアの専門家は、カウンセリングや薬物治療などで、患者さんとご家族を支援していきます。
国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト 心のケア がんと心(2022年7月19日時点)
■家族へのがんの伝え方
夫や高齢の両親に、どのように伝えたらいいかと悩む患者さんは少なくありません。また、幼児期や学童期、思春期の子どもがいる子宮頸がんの患者さんの場合は、がんの診断を受け真っ先に考えたのは、子どものことではないでしょうか。
- 夫婦でよく話しましょう
がんとその治療の見通しについて、情報を共有し、時間をかけて話し合いましょう。患者さんと同様にショックを受け、事実を受け止めるのに時間がかかることもあります。パートナーとの距離感は夫婦でさまざまですが、がんの闘病生活をひとりで乗り越えることはできません。がん治療が始まると、病状説明の同席や入院の世話、通院の付き添い、家事・育児の分担などで、配偶者は一気に忙しくなります。それでも、サポートしてほしいことがあれば伝えましょう。がんとの闘病では、つらいときもあるでしょう。患者さんご自身が、無理をして気丈にふるまっている姿を見せると、パートナーは自分の気持ちを吐き出せなくなり、大変さをひとりで背負い込んでしまうこともあります。相手への配慮は大切ですが、気持ちや悩みを伝えて理解してもらうことが、お互いの支えになります。
- 高齢の親への伝え方
親には心配をかけたくないと、がんを伝えることをためらう方は多いことでしょう。高齢の親は、本人以上に衝撃を受けてひどく悲しむかもしれません。早期のがんであったため、離れて暮らす両親には伝えなかったという患者さんもいます。伝えたことで親に泣かれてつらかったという方や、闘病生活を助けてもらい一緒に時間を過ごせてよかったという方もいます。伝えるかどうかの正解は、がんの経過や両親の性格、それぞれの家族の状況によって異なるのかもしれません。がんを伝えるときには、かつてと異なり多様化するがん治療法があることを説明し、治療経過を適宜報告するなど、安心させるためのフォローを忘れないようにしましょう。
- 子どもへの伝え方
がん患者さんの子どもが親の病気を知らされていない場合、親の様子や家庭内の雰囲気が普段と違うことに気づき、親の不調は自分のせいだと思い込み、罪悪感や悲しみ、孤独の感情が強まることがあります1)。また、何が起こっているかわからない状況では、子どもは正しい判断ができず、ネガティブな想像をしがちです。子どもは、自分にも伝染するのではないかと誤解することもあります。親ががんであると率直に伝えることで、子どもは質問しやすくなり、不要な憶測や不安感、ストレスを軽減することにつながります2)。
がんになった親と子どもを支援する団体「Hope Tree」3)は、次の3つの“C”を念頭に置いて、子どもに伝えることを紹介しています。
●それはCancer(がん)という病気。
●それはCatchy(伝染)しない。
●がんは、あなたが思ったことや、やったこと、やらなかったことがCause(原因)ではありません。
NPO法人Hope Tree(ホープツリー)「子どもに伝えるときは3つの“C”を念頭に」(2022年7月19日時点)
子どもが幼い、説明方法がわからない、子どもに心配をかけたくない、親自身がまだ病気を受け止められていないなどの理由で、実際にはがんをまだ伝えていない患者さんも多いことでしょう。子どもに、誰が、いつ、どのように伝えるかは、子どもの発達段階や理解度、親の治療経過によってさまざまです4)。子どもの年齢・発達段階や性格に応じた配慮、親自身の心の準備も必要となります5)。
子どもの年齢に応じた特徴とがんを伝える際の対応
(KNITプログラムを参考に筆者作成)
「小林真理子:親のがんを子どもにどう伝え,どう支えるか,がん看護 18(1), p.60, 2013」より許諾を得て転載
下記のサイトでは、がんになった親と子どものために、がんについて子どもと話をするときのヒントや年齢・発達段階に応じたアドバイス、資料・冊子、絵本などを紹介しています。
●がんになった親と子どものために〔NPO法人Hope Tree〕
<参考文献およびサイト>
- 椎野 育恵 他. 日本がん看護学会誌 2019; 33 (1): 21-28.
- 井上 泉子. がん看護 2020; 25(6): 585-590.
- NPO法人Hope Tree(ホープツリー)(2022年7月19日時点)
- 小林 真理子. Nursing Today 2014; 29(6): 12-15.
- 小林 真理子. がん看護 2013; 18 (1): 57-61.

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