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治療

治療方針1)


腎盂・尿管がんの治療には、主に「手術療法」、「薬物療法」、「放射線療法」があります。

「薬物療法」には「上部尿路注入療法」、「全身薬物療法」があります。「全身薬物療法」では抗がん剤(化学療法)に加え、がん免疫療法とよばれる治療法も注目されています。
それぞれの治療法は単独で行う場合もありますが、多くの場合、複数の治療法を組みあわせて行います。
このように複数の治療法を組みあわせて行うことを「集学的治療」といいます。


がんの広がりや深さによって基本となる治療が異なるため、検査結果を踏まえ、患者さんの全身状態、腎機能などを考慮し、医師、患者さんとご家族で相談しながら治療方針を決定します。

<治療方針を決めるポイント>

  • 腎盂・尿管がんの進行の程度はどうか
  • 患者さんに治療を受けられるだけの体力があるか
  • 患者さんの希望や年齢、併存症(腎盂・尿管がんの場合、がん以外に1つ以上の別の病気が共存する状態)の有無 など

1)国立がん研究センター.がん情報サービス, それぞれのがんの解説(腎盂・尿管がん)(2023年3月参照)

治療


①手術療法

i. 手術療法の概要 

腎盂・尿管がんの治療は手術療法が基本で、がんの発生部位やがんの広がり方などによって、手術する範囲が異なります。
腎盂・尿管がんのように「尿路上皮」にがんができると、「尿路上皮」の広がっているほかの部位にもがんが発生していたり、がんの治療後に再発しやすいことから、がんのある片側の腎臓と尿管をすべてとりのぞく手術が行われます。


ii. 腎尿管全摘除術

がんのある片側すべての上部尿路 (腎臓と尿管、膀胱の一部)をとりのぞきます。

腎尿管全摘除術

iii. 尿管部分切除2)

がんが尿管にあり、小さく1ヵ所でとどまっている場合は、尿管を部分的にとりのぞく手術をすることがあります。また、尿路の左右両方にがんがあったり、腎臓の働きが弱まっている場合は、腎臓をとりのぞかず、尿管だけを切除することもあります。

2)国立がん研究センター.がん情報サービス, それぞれのがんの解説(腎盂・尿管がん)(2023年3月参照)

②薬物療法

i. 薬物療法の概要3)

腎盂・尿管がんの組織型、病期(進行の程度、ステージ)、患者さんの全身状態(治療に耐えうる体力)や年齢などを考慮して使用する薬剤が選択されます。また、作用の異なる薬剤を組みあわせて用いる併用療法も広く行われています。


腎盂・尿管がんの薬物治療には「上部尿路注入療法」と「全身薬物療法」があります。

3)日本泌尿器科学会 編. 腎盂・尿管癌診療ガイドライン 2014年版.メディカルレビュー社, p59-62, 2014.


ii. 上部尿路注入療法4)

上部尿路注入療法は「上皮内がん」に対して行います。
膀胱鏡を用いて尿管へカテーテルをさしこみ、尿管へ直接薬剤(抗がん剤やBCG〔ウシに感染する結核菌の毒性を弱めたワクチン〕)を注入します。お腹から腎盂にカテーテルを通し(腎瘻〔じんろう〕)、そこから薬剤を注入する方法もあります。

図 上部尿路注入療法のイメージ

上部尿路注入療法のイメージ

4)日本泌尿器科学会 編. 腎盂・尿管癌診療ガイドライン 2014年版.メディカルレビュー社, p60, 2014.


iii. 全身薬物療法

がんが腎盂・尿管を越えて周囲の臓器や脂肪組織、リンパ節へ広がっていたり、再発をしている場合は、全身薬物療法を行います。
また、がんが広がっている可能性があるときには、手術前(または、手術後)に抗がん剤を投与する「術前(術後)化学療法」を行うことがあります。
腎盂・尿管がんの薬物療法は、作用の違いにより「化学療法」、「免疫チェックポイント阻害薬」による治療の2つに分けられます。

全身薬物療法

化学療法5)

「化学療法」は、抗がん剤を使ってがん細胞が増えるのを抑える治療法です。
腎盂・尿管がんの化学療法で用いる抗がん剤は、プラチナ製剤とよばれる種類の薬剤のほか、いくつかの薬剤を組みあわせて治療します。
化学療法は再発や転移の可能性が高い場合に実施します。手術前または手術後に行う化学療法をそれぞれ「術前化学療法」、「術後化学療法」といいます。

5)日本泌尿器科学会 編. 腎盂・尿管癌診療ガイドライン 2014年版.メディカルレビュー社, p59-60, p65-66, 2014.


免疫チェックポイント阻害薬

免疫は、細菌やウイルス、がん細胞などの異物をみつけると、それを排除するためにさまざまな働きをします。一方、その働きが過剰になりすぎて体を傷つけてしまわないようにブレーキをかける機能も備わっています。 このような免疫の働きを利用し、がん細胞を排除するのが免疫チェックポイント阻害薬による「がん免疫療法」です。


T細胞はがん細胞を攻撃します。しかし、がん細胞表面にあるPD-L1という物質が、T細胞表面のPD-1と結合すると、がん細胞からT細胞に攻撃中止のシグナルが発信されます。それにより、がん細胞に対するT細胞の攻撃にブレーキがかかります。


免疫チェックポイント阻害薬はPD-1とPD-L1の結合を阻害し、がん細胞からT細胞に送られているシグナルを遮断します。その結果、T細胞のブレーキは解除され、がん細胞への攻撃が再開されます。この結果、抗がん作用が発揮されると考えられています。

免疫チェックポイント阻害薬によって免疫が働きすぎて、副作用として現れることがあります。

③放射線療法

放射線療法の概要6)

「放射線療法」は、がんのある部位に放射線を当てて、がん細胞にダメージを与える治療法です。
腎盂・尿管がんへの「放射線療法」単独での効果はあまり期待できませんが、手術と異なり体に傷をつけないため、全身にがんが転移していたり、高齢者や合併症があり手術が難しい場合に「放射線療法」を行うことがあります。

また、がんによる症状を緩和するために「放射線療法」を行うことがあります。
がんのある部分からの出血や周辺臓器の圧迫による痛み、骨への転移による痛みの軽減などのために行われます。


6)国立がん研究センター.がん情報サービス, それぞれのがんの解説(腎盂・尿管がん)(2023年3月参照)

再発、転移7, 8)


再発について

尿路(腎盂、尿管、膀胱、尿道)でがんが発生すると、尿路全体にがんが発生しやすい傾向がみられます。とくに、腎盂・尿管がんの術後30~50%に膀胱がんが発生し、2年以内の再発が多いとされています。腎盂・尿管がんの前に膀胱がんを発症していたり、腎盂・尿管がんと膀胱がんが同時に発見されることもあります。
このため、腎盂・尿管がんや膀胱がんの手術後は、定期的な検査が重要です。
再発した場合、それぞれの患者さんによって状態が異なるため、症状や体調あるいは希望に応じて治療方針を決めていきます。

転移について

転移とは、腎盂・尿管がんの細胞が血液やリンパ液で運ばれて、別の場所で増えることをいいます。
腎盂・尿管がんが転移しやすい場所は、リンパ節や付近の脊椎骨などのほか、肝臓、肺、骨などです。離れた場所への転移を遠隔転移といいます。

図 腎盂・尿管がんと転移しやすい場所

腎盂・尿管がんと転移しやすい場所

7)日本泌尿器学会 編. 腎盂・尿管癌診療ガイドライン 2014年版. メディカルレビュー社, p15-17,65-66, 2014.
8)国立がん研究センター.がん情報サービス, それぞれのがんの解説(腎盂・尿管がん)(2023年3月参照)

監修:荒井 陽一 先生
宮城県立がんセンター 総長


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